おりものが気になる
おりものは「帯下」ともいい、腟や子宮からの分泌物が腟外に流れ出してくるものの総称です。おりものは、腟内のはがれた細胞と分泌物よりできています。
正常なおりものの色は、個人差はありますが透明に近いか白っぽい色。下着などについて乾くと薄黄色に変色します。
おりものには、雑菌などが増えないように腟内を酸性にして、外部からの感染を防御する働きがあります。これは腟内にいる善玉の乳酸菌の働きです。このため、おりものは酸っぱいような臭いがしますが、異常ではありません。
おりものは少しならあるのが普通です
少しの変化であれば、とくに病気ではないことも多いといえます。
おりものは月経の周期で変化しますし、すこし酸っぱいような臭いはむしろ正常です。
また、下着について乾燥するとやや黄色になることも、それほど気にしなくてもいいかもしれません。
しかし、おりものがいつもより多い、おりものが臭う、黄色いなどの症状は、何かの感染かもしれません。
臭いが気になる
臭いがする原因で一番多いのは雑菌です。細菌性腟炎といいます。
雑菌はカラダの表面や腸の中にいる菌です。雑菌は普段少しいるだけなのですが、体調が悪いときや、月経前の時期に増えやすくなります。軽いものであれば自然に治ることも多いのですが、長く続くとき、きつい臭いがするときは治療が必要です。
クラミジアは必ず調べましょう
雑菌はそれほど怖いものではないのですが、おりものが多い場合には性病の可能性があり、これは要注意です。
おりものが多い人で、定期的に性交渉がある場合、クラミジア頸管炎という性行為伝染病(STD)の可能性もあります。クラミジアの場合自覚症状がないこともあります。
クラミジアは雑菌と違って自然には治らず、放置すると卵管が詰まって不妊の原因になります。性交渉のある10~20代であれば検査を受けることをおすすめします。
白いおりものが多い
おりものが酒粕状、クリーム状、チーズ状、豆腐のカスのようにぼろぼろとしている場合は、カンジダ腟炎、頸管炎などが疑われます。おりものが緑色に見えることもあります。カンジダ腟炎の場合には、腟内部や外陰部に強いかゆみを伴うことが多いものです。
腟錠やクリームで治療します。再発することもよくありますので、きちんと治療することが大切です。
膿性黄白色・黄色・緑色のおりものが多い
多くは雑菌が原因で、臭いもきつくなります。外陰部が少しかゆいときには、トリコモナス腟炎の可能性があります。これはトリコモナス原虫という寄生虫の一種によるもので、多くは性交で感染する性行為伝染病(STD)の1つです。
腟錠、内服薬で治療します。男性にはほとんど自覚症状がなく、検査してもわからないことが多いので注意しましょう。
茶褐色のおりもの
茶褐色や赤っぽい場合には、おりものに血液が混じっている可能性があります。
子宮頸部がん、子宮体部がんなども疑われます。また、高齢の方では、萎縮性(老人性)腟炎の場合にもおりものに血液が混じることがあります。
性感染症
性感染症とは?
性行為によって感染する疾患を性感染症といいます。性感染症の特徴として典型的な症状が出にくく、そのため、ご本人が気づかないうちに病状が進行してしまう場合も珍しくありません。感染の不安をお持ちの方はなるべく早めに婦人科を受診し、適切な治療を受けていただくことが大切です。
性感染症にはどのようなものがあるのでしょう?
クラミジア感染症
今、性感染症といえばクラミジアです。クラミジアは子宮に感染します。
10~30代に増加の傾向がみられ、およそ20人に1人くらいの割合です。女性の場合症状がほとんどありません。
クラミジア感染を放置すると、炎症が子宮から卵管を通ってお腹の中まで広がって、腹膜炎を引き起こしたり、卵管が癒着して、将来不妊につながることもあります。
クラミジアの検査は、おりもののチェックによって行われ、治療はお薬を1回飲むだけで治ります。
淋病
200~100人に1人くらいの感染率です。淋菌の感染によって起こり、膿のようなおりものや排尿痛などがみられますが、はっきりとした症状が出ない方も多くいます。無処置のままだとクラミジアと同様に炎症が骨盤内にまで波及して、さまざまな合併症発症の引き金になります。
1回の性交渉により、かなりの確率で感染するといわれています。まさに性感染症といえます。
菌が確認できましたら抗生物質による治療を行います。
クラミジアの検査と一緒に行えば費用的にも高くありませんので、定期的に検査することをおすすめします。
トリコモナス腟炎
トリコモナス原虫の感染によって発症します。黄色いおりものがあり、外陰部にかゆみを伴うこともあります。顕微鏡によって原虫の存在を確認し、治療には、トリコモナス用の腟剤と内服薬を使用します。男性の場合無症状なのですが、ピンボン感染を防ぐために必ず治療が必要です。
性器ヘルペス
単純ヘルペスウイルスに感染したことによって生じる性感染症です。200~100人に1人くらいの感染率です。
感染すると、数日の潜伏期を置いてから外陰部に強い痛みが出て、さらに水泡、潰瘍ができて高熱を伴う場合もあります。また、患部が下着に触れたりこすれたりしただけでも強い痛みを感じ、排尿時にも激痛があります。放置しても10日くらいで治りますが、治療した方が早く楽になります。治療には、抗ウイルス製剤の飲み薬や患部に塗る軟膏が使われます。
ただ、この病気はその後もウイルスが持続的に体内に潜んでいて、からだの抵抗力が落ちたりすると再燃する可能性があります。今の医学ではウイルスを取り除くことはできません。
尖圭コンジローマ
ヒトパピローマウイルス(HPV)6型、11型(子宮頸がんの発現に関与するHPVとは異なるタイプのウイルス)の感染によって発症する疾患で、外陰部、肛門のまわり、腟壁などに小さなイボができます。このイボはしばしば多発し、通常痛みなどの自覚症状はありませんが、やはり性行為でうつる可能性のある病気ですから、パートナーへの感染を予防するためにも、きっちりとした治療が必要になります。
当クリニックで行う治療は、一般にイボの数が少ない場合は麻酔をした上で、電気メスやメスで外科的に取り除きます。イボの数が多く、かつ広範囲にわたるようなケースでは、切除は困難なため総合病院をご紹介します。
梅毒とHIV
どちらも1万人に1人以下の感染率。しかし放置すれば命にかかわる病気です。早くみつけて対処することで、生命の危機からは逃れられます。
HIVは、治療により発症を予防できるようになってきています。確率が低いのですべての人が検査を受ける必要はないかもしれません。しかし、一度でも性病にかかったことがあれば、HIVの検査をしておくことは安心のためにもいいでしょう。今は保健所で、HIVの検査を無料で受けることができます。
もちろん当クリニックでも検査はできますので、ご希望があればお申し出ください。
不正出血
不正出血とは?
ホルモンの異常やさまざまな病気により月経以外に性器から出血することを不正性器出血といいます。新しい血液は赤いですが、古い血液は茶色、わずかな出血では黄色のこともあります。
原因の多くは一時的なホルモンバランスによる機能的な出血ですが、中には治療を要する場合があります。
不正出血はカラダからのアラームかも知れません。 検査ですぐに不正出血の原因がわかる場合もありますので、いつもと違う出血があったら診察・検査を受けることが大切です。
どのような原因がありますか?
炎症によるもの
普段腟の中はデーデルライン桿菌という菌によって酸性に保たれ、他の病原菌の増殖を抑えています。これを腟の自浄作用(じじょうさよう)と呼びます。
性交渉やストレスなどによりこの自浄作用が破綻すると、腟内や子宮の入口に菌が増殖して炎症がひどくなり、出血しやすい状態になります。
ホルモン異常によるもの
排卵していなかったり(無排卵性出血)、排卵するのに時間がかかってしまう(遅延排卵)の場合など、排卵に異常があるとよく不正出血が起こります。このような出血の特徴は、出血が通常の月経より少なかったり、逆に多量の出血がぐずぐずと長い日数(10日以上)続くことが多いのです。これを機能性子宮出血といいます。
このような場合は、ホルモン剤で出血を速やかに止め、排卵を再開させるという治療が必要です。
40代後半になると次第に無排卵性の生理となり、生理周期も短くなることがあります。また、不正出血が頻回に起こることもあります。「更年期」は、婦人科悪性腫瘍が発生しやすい時期でもありますので、きちんと検査を受けることが大切です。
また、排卵期には、急激にエストロゲンの分泌量が変化するため、一部の子宮内膜がはがれ落ち、少量の出血が起こることがあります。これを排卵期出血といいます。排卵期出血は治療の必要はありません。排卵期の出血はだいたい月経と月経の中間に起こるので、中間期出血ともいわれています。
良性の腫瘍
- 子宮頸管ポリープ
- 子宮の入口(頸管)に、ポリープと呼ばれるキノコ状の良性の腫瘍ができる疾患です。おりものの量が増えたり、茶褐色に変化したりするのに加え、性交やスポーツの後、排便時のいきみのときなどに少量出血するなどの症状が現れます。妊娠を経験した30~50代の女性に多く発生する疾患ですが、原因はわかっていません。
- 子宮内膜ポリープ
- 子宮の内腔にできるポリープです。超音波検査でみつけることができます。悪性かどうか調べるため子宮内膜検査(子宮体がん検査)を行います。子宮内膜ポリープがあると、月経の出血が多かったり、長引いたりする傾向にあります。
子宮筋腫
子宮にできる良性腫瘍です。30~40代に多く、成人女性の5人に1人は筋腫があるといわれています。初期の自覚症状はほとんどありませんが、筋腫が大きくなると月経痛が強くなり、月経出血の増加や期間の長期化、不正出血がみられます。そのため、貧血やめまい、立ちくらみなどを引き起こします。また、周囲の臓器にも影響を与えて、頻尿や排尿、排便時の痛み、腰痛を起こすこともあります。不妊や流産の原因にもなります。
子宮腟部びらん
子宮の入口の粘膜と腟部の粘膜がただれるのが子宮腟部びらんです。おりものが増えたり、不正出血がみられたり、性行為の後に少し出血したりしますが、多くは自覚症状がありません。びらんがあると細菌に感染しやすくなるため、子宮頸管炎などの原因になることがあります。
若い女性では一般的にみられる状態ですので病気とはいえませんが、子宮頸がんの初期の場合もありますので注意が必要です。
悪性の腫瘍
- 子宮頸がん
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20~30代に多い、子宮の入口にできるがんです。多くは性交渉によりHPV(ヒトパピローマウイルス)に感染することが原因となって発症します。初期症状はほとんどなく、HPVに感染すると細胞が変化し、数年かけてがんに発展します。進行の途中では、おりものが増えて茶色がかった色になったり、生理の期間が長くなる、不正出血や性交時の出血といった症状が現れることがあります。出血量や出血の色だけではホルモンバランスによる出血と区別することは困難です。
子宮がん検診 - 子宮体がん
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50代以上に多く、子宮内膜の細胞が悪性に変化し、がん化したものです。最近では30代で発症するケースも増えています。無理なダイエットや加齢などで女性ホルモンのバランスが乱れることが原因と考えられています。
初期症状のほとんどない子宮頸がんに比べ、子宮体がんは初期の段階から9割の人に不正出血がみられます。その他おりものが茶褐色になったり、月経やおりものの量が増えたりします。40代後半の更年期は月経周期がゆらぐ時期でもあるため、ホルモンバランスによる出血なのか、子宮体がんによる出血なのかをきちんと検査することが大切です。
子宮がん検診
妊娠に関連するもの
2ヵ月以上月経がなく妊娠の可能性が高いと思っていたのに、腹痛を伴った不正出血が続く場合には、流産や切迫流産、子宮外妊娠の疑いがあります。「月経が来てよかった」と考えず、この場合はすぐに産婦人科を受診しましょう。
月経にしては出血の量が少ないときには、市販の妊娠検査薬で確かめてみるのもよいでしょう。
ご心配な場合には
不正出血では重大な病気が隠れていることもあります。ぜひ、産婦人科を受診して検査を受けてください。疑われる病気によって検査はさまざまです。また、一度の検査で異常がみつからなくても、不正出血を繰り返すときはごく初期の病気が潜んでいることもあり、検査を繰り返したり、以前の状態との違いを比較することで診断できることもあります。
毎回異なる病院で受診するのではなく、同じ病院で変化をみてもらうことをおすすめします。