ドクターメッセージ
女性の平均寿命が90歳に近づきつつあるわが国において、更年期は人生の折り返し地点です。この時期に起きるさまざまな問題を私たち産婦人科医と二人三脚で上手に乗り越えて、第2の人生を明るく幸せに過ごしましょう!
最近、眠れないとか、なぜかイライラするとか、急に落ち込んでしまうということはありませんか?
顔がほてったり、暑くないのに汗がふきだすということはありませんか?
何もしていないのに、急に心臓がドキドキしたり、息が苦しくなったりしませんか?
「これって、更年期障害?」と思ったら、まずは産婦人科医に相談してみましょう。つらい症状に悩んでいても、何らかの治療法がみつかるかもしれません。
女性の平均寿命が延びた今、閉経後の約40年という期間をいかに快適に過ごすかがとても重要です。
日本人の平均閉経年齢は約50歳ですが、個人差が大きく、早い人では40代前半、遅い人では50代後半に閉経を迎えます。
閉経前の5年間と閉経後の5年間を合わせた10年間を「更年期」といいます。
更年期は心にもカラダにもさまざまな変化が現れるときです。カラダに起こる変化の1つが女性ホルモン(とくに女性にとって大切なホルモンであるエストロゲン)の減少です。
エストロゲンは、月経や生殖機能ばかりでなく、カラダのいろいろな場所で活躍しています。
更年期にはエストロゲンが低下するため、「ホルモンバランスの乱れ」に加えて、「エストロゲンの減少」によるさまざまな影響が現れるのです。
さらに更年期は、心理的・社会的にも不安定な時期です。
このため更年期症状は、「加齢に伴うカラダの変化(ホルモンバランスの乱れ、エストロゲンの減少)」と「心理的・社会的な変化」が複雑に関係し合って起こるのです。
エストロゲンの補充と生活習慣の改善が更年期障害の治療と疾患(※)の予防方法といえます。
(※)疾患:骨粗しょう症、動脈硬化症、脂質代謝異常症など
卵巣機能の低下に伴う女性ホルモン(エストロゲン)の低下・欠乏を薬剤で補充し、精神・身体機能の改善や維持を目的とした治療法です。強力なアンチエイジング治療でもあります。
HRTに使用するエストロゲン製剤は、現在、天然型のエストロゲンが主流です。避妊用ピルに含まれるエストロゲンは合成ホルモンのため、避妊用ピルはホルモン補充療法には適しません。
投与方法も内服、貼付、塗布があり、生活スタイルに合った投与法で使用することになります。
貼り薬、塗る薬は皮膚のかぶれに注意が必要ですが、飲み薬と違い、肝臓への負担がないことが特徴で、そのため中性脂肪や動脈硬化症の原因物質の増加がみられないことや静脈血栓塞栓症のリスクを高めないこと、乳がんのリスクが飲み薬に比べて低いことなどがメリットとして報告されています。
HRTを始めたとたん晴ればれとしたお顔で、「信じられないほどすっきりしました!」とおっしゃる女性も少なくありません。HRTは、生活の質(クオリティオブライフ)を高める理にかなった治療法なのです。
これらの症状は薬の頻度や量を調節して改善できます。
また、月経のような出血がみられることもありますが、それを避けたい場合は、薬の加減で出血させない方法もあります。
また、ホルモン剤には若干血液をかたまりやすくする働きがありますので、血栓症(血管の中に血液のかたまりができて、血管が詰まる状態)には注意が必要です。頻度はまれですが、ふくらはぎの腫れ、むくみ、胸の痛みや強い頭痛などがあった場合には、お薬の使用を止め、すぐにご相談ください。
HRTは、更年期障害の根本治療を目的とした薬ですが、更年期障害の他の症状の緩和のために、漢方薬や抗うつ・抗不安薬を一緒に使うこともあります。更年期障害を治療する目的は、ご本人のつらい症状をなくすことです。これらの薬を上手に組み合わせることで、快適な暮らしを取り戻すことができるでしょう。
その他、まわりの人や、専門のカウンセラーによるカウンセリングも効果的といわれています。治療を進めながら、人に話をしっかり聞いてもらうことで、カラダと心のストレスを取り除いてあげましょう。
女性の平均寿命が90歳に近づきつつあるわが国において、更年期は人生の折り返し地点です。この時期に起きるさまざまな問題を私たち産婦人科医と二人三脚で上手に乗り越えて、第2の人生を明るく幸せに過ごしましょう!