VOL.22 2002.2
 子守歌を聞かせてネ
 
  お母さんの優しい子守歌。それを聴いて赤ちゃんはスヤスヤ眠りに入っていく。そんな赤ちゃんの顔はおだやかで、ママも幸せを感じるひとときですね。でもママの子守歌が赤ちゃんに届いていないとしたら・・・ 現在、日本で生まれてくる赤ちゃんの1000人に1〜2人は「両側(左右の耳)難聴」などの聴覚障害を持って生まれてきます。「片側難聴」など比較的程度の軽い聴力障害を含めると1000人に5〜6人くらいの比率になります。聴力障害は、ほかの先天性異常に比べて比較的頻度が高いにもかかわらず、これまでは検査されていませんでした。

聴力異常の影響
赤ちゃんは成長と共に、耳からお母さんの声や音楽などを聞き、それに反応して、脳が学習していきます。ところが聴覚に障害を持った赤ちゃんは、耳から音や声を聞くことが難しいため、言葉を覚え、言葉を理解する能力の発達が遅れます。赤ちゃんは聞こえないということを周りの人に伝えることができないため、新生児期および乳幼児期の聴覚障害は、親や医師によって発見するということが非常に困難です。2〜3歳頃になって、「言葉が遅い」ということではじめて難聴に気づくことが多く、日本では発見が平均2.5才と、言語発達に一番重要な時期からはるかに遅れた段階で発見されているという実情にあります。

早期発見の意義
「生後36ヶ月(3才)の正常聴力児の語彙は平均700語、誕生時に聴力障害を発見して対策を施した子供は、約400語を習得し、生後6ヶ月で発見して対策を施した子供は280語、2年で聴力障害を発見された子供はわずか25語の語彙であった」というアメリカでの報告があります。このように重症の両側性聴力障害でも、生後3ヶ月以内に発見し、生後6ヶ月までに補聴器などの適切なケアを行うことにより、正常なお子さまと同じくらい「言葉」を獲得することができます。難聴を持つ子供をできるだけ早期に発見することの重要性は、50年以上も前からアメリカを中心として、提唱されていましたが、測定手技上の問題で、聴力検査は普及しませんでした。しかし、最近になって、新生児聴力スクリーニング用装置が開発され、1999年までにアメリカでは多くの州で、全新生児対象聴力検査が行われ、成果 を上げてきています。日本でも1999年、当時の厚生省が「5年後に、全新生児に聴力検査を行う」方針を立てていますが、現在のところ、岡山県などごく一部の地方で実験的に行われているだけです。従来の聴力検査装置では、検査費用が7,000円〜10,000円と高額なためすべての赤ちゃんに行うことが経済的に困難であることが理由の一つとしてあげられています。 佐藤クリニックでは、2種類の方式で検査のできる最新鋭の聴力検査装置を導入し、このたび当院で出生したすべての赤ちゃんに聴力検査を行うことになりました。もちろん検査費用もかなり抑えることができるようになっています。

検査の方法と費用
まず生後3日にOAE(耳音響放射)法を行います。検査費用は1回2000円。OAE法で「REFER」(要再検査)の結果 が出た赤ちゃんには引き続き自動ABR(聴性脳幹反応)法を行いますが、検査費用は別 に2000円かかります(3月末までは試験期間で無料ですが、4月以降有料になります)。この検査は任意の検査ですので、検査を受けたくない方はお申し出ください。詳しくは当院スタッフにお尋ねください。

検査結果について
検査は左右の耳ごとに行い、左右の耳それぞれについて、「PASS」あるいは「REFER」という結果 が出ます。 「PASS」というのは、文字通りこの検査にパスしたということで、理論上99.9%以上の確率で聴覚障害はないといえます。ただし、生後におこる中耳炎による難聴や生後しばらく経って聴力に障害が出る進行性難聴は、発見できませんので、この点注意が必要です。「REFER」というのは、再検査が必要という意味です。検査時の周囲の環境や赤ちゃんの状態によって、正常な聴力でも約5%の赤ちゃんに「REFER」の結果 が出ることがあります。従ってOAE方式で「REFER」の結果が出た場合、別 方式の検査である自動ABR方式で再検査をしてみます。この結果で「PASS」が出れば聴力障害はないと考えられます。OAE法と自動ABR法で「REFER」の結果 であれば、さらに時期を変えて、再検査を繰り返します。時期を変えることにより「REFER」から「PASS」になる可能性がかなりあるからです。 現在日本では先天異常のスクリーニング検査として、「先天性代謝異常検査」が行われており、すべての赤ちゃんに対して血液検査を行っています。この検査で発見されるフェニルケトン尿症は8万人に1人の発生頻度で、もっとも頻度の高い先天性甲状腺機能低下症は5000人に1人です。先天性難聴はその5〜10倍の発生頻度であることを考え、是非この検査を受けるようにしてください。 赤ちゃんの健康を守る医療技術は毎年どんどん発達していきます。私たちはその医学の進歩を赤ちゃんにプレゼントしたいのです。
 

 
 

検査の方法と原理
佐藤クリニックで行うスクリーニング検査には、OAE(耳音響放射)法と自動ABR(聴性脳幹反応)法があります。どちらの方法も赤ちゃんの耳にプローブ(耳栓のような物)をつけてかすかな音を聞かせるだけですので、赤ちゃんには安全で何の負担もかからない検査です。
自動ABR法
聴性脳幹反応(ABR)は従来から聴覚障害の診断に用いられてきましたが、測定は防音室の中で、赤ちゃんに睡眠薬を投与し、眠らせて行う検査で、その結果 を判定するのに何時間も要する検査でした。自動ABRは、この判定を自動化したもので、頭と耳のまわりに電極をつけ、赤ちゃんにレシーバーなどで音を聞かせ、そのときの脳波を測定します。音刺激に対する脳波上の変化をコンピューターで解析し、聞こえているかどうかを判断します。赤ちゃんが自然に眠っているときであれば3分〜十数分くらいで判定できますが、起きているときは、判定できなかったりします。
OAE法
転外から耳に音(空気の振動)が入ってくると、外耳を通 って鼓膜を振動させ、中耳、内耳へと振動が伝わります。この振動を受けて内耳にある蝸牛(かぎゅう)というところが振動し、その振動が神経に伝達されて音が聞こえるわけですが、この蝸牛というところの振動が逆に反射して鼓膜を振動させるので、この反射音を高性能マイクで拾ってコンピューターで分析し内耳の機能を測定します。赤ちゃんが泣いていなければ10秒〜数十秒くらいで判定できますが、欠点は「REFER」(要再検査)率が5%くらいあることです。

OAE測定方法

 

 
院長から一言
 
 

たまに雪が降ると何となく気持ちがウキウキしてきます。子供っぽいといわれるかもしれません。雪が降ることをうれしがるのは、雪が降らない地方に住んでいて、雪国の不便さ、つらさを知らないからだとおしかりを受けるかもしれません。でも、雪が降ると何となく心が騒ぐのです。
私は京都府の北部に生まれ育ちましたし、そのころは今よりもっと雪が積もっていました。積雪のため家がひずんで、障子が動かないということも一冬に何度かありました。大学も、鳥取県という山陰の豪雪地帯にいました。だから雪国で育ったと思っていますし、その不便さつらさも知っているつもりです。それでも冬になると雪が降ってほしいと願うのです。
小学3年生の頃から中学2年生の頃まで、歩いて数分のところにある銭湯に通 っていました。ある夜遅く、雪が降っているとき、銭湯からの帰り道のことです。雪を踏みしめるキュッキュッという音が妙に耳に響き、ふと立ち止まると、急にしんと静まりかえって、さくさくと雪が積もる音だけが耳に届きます。そして空を見ると、際限もなく落ちてくる雪。また歩き始めると「キュッキュッ」。立ち止まると「さくさく」。こんな光景に感激をしたことが何度かあります。まだ生活の苦労を知らないうちの原体験ですから、雪による不便さなどに結びつかず、だから雪が降ると何となく心が騒ぐのかもしれません。今も外では雪が降っています。まだ湖岸道路を通 る車の音が「シャー」という音なので、あまり積もっていませんが、明日の朝は積もっているでしょう。駐車場の除雪もありますので、明日は5時起きかな。ちょっとつらい。

 
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